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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク

「瑛二さんが結衣子さんを語る時の惚気みたいな言い方も、結衣子さんが瑛二さんを理解した上で叱ったり受け入れたりしてるのもそう」
「知ってるよ。散々見てる」
「稜くんが結衣子さんに向ける穏やかで愛しそうな目も、結衣子さんが稜くんには甘えて委ねてるのもそう。全然歪んでない」
「そこだけ切り取るからだ」
「擬似的なのとは違う。バックグラウンドがないと出来ないことだよ。私だって色んな愛の形見てきた。プレイとそれ以外は明確に違うってことくらいわかる。手段として色んな方法を使うだけでそこにある感情はいつも愛情だったもん」

急に堰を切ったよう。一気に溢れて止まらなくなる。

「あのふたりはそうだろうけど俺まで巻き込むな」
「巻き込んだじゃない。わざわざ瑛二さんに言ってまで対等になって、同じ目線で結衣子さんを見るようになったんでしょ」
「だからそれは」
「何が面白くなかったの?」

呟いたにしては随分と感情の篭った言い方が、ずっと気にかかっていた。
1回だけじゃなく、2回も。

「稜くんは誰に対して言ってたの?」
「あんなの独り言だ」
「どっちも瑛二さんと結衣子さんが絡んでた」
「随分突っかかるねさっきから。気に入らないな」

稜くんに苛立ちが滲んで一瞬怯みそうになる。
でも、やっぱり引けない。冷静な彼が苛立つってことは、

「わ……」

もしかして、

「私だって気に入らないよ!中途半端に言い逃げてばっかりで。誤魔化さなきゃいけないことがあるみたい」
「何もないって」
「嘘だ」
「君に何がわかる」

発言のきっかけになったのはどちらも、瑛二さんの、結衣子さんへの衝動。

「……瑛二さんは、結衣子さんに遠慮なく衝動をぶつけるよね」

彼が『面白くない』のは、どこであろうと誰がいようと衝動のまま彼女を抱く彼に対してであって

「それを知ってる結衣子さんは、彼に逆らえないよね」

それを許して受け入れてしまう彼女に対してであって

「……面倒くさいな。もう黙りなよ」

更に自分に対してでもあるとしたら……

「稜くん、嫉妬して――っ!」

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