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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
稜くんが本当に抱きたい相手は今、別の人に抱かれている。
彼の同意も何もないままに。
「はっ、あっ……んぁっ」
稜くんにちゃんと抱かれている訳でもないのに、ありありとわかってしまった。
まるで濁流のように流れ込んでくる彼の想い。
こんなの、結衣子さんが少しずつでも受け入れていたとしたら
気付かない訳……
「ごめん。ほんと余裕ないわ、俺」
思えば思う程涙が出そう。
首を縦にひと振りして、受け入れた。
中で脈打って動きが緩慢になり、大きな息を吐いて彼が私の中からいなくなる。
それにしてもなんてわかりやすいんだろう。
普段の彼から想像出来ないほどだ。キスもしなければ名前も呼ばない。肌と肌が密着することもなく挙句縛ったままバック。
普通なら失礼だと罵声のひとつも飛び出しそうだけど、無理もない。
優しく出来ないと言った通り。
手首の縄が漸く解かれて、私もやっとひと息つけた気がした。
こんな交わりもあるのだな、とひとりごちる。
後処理を済ませ床に座り込んで交わった視線。幾分穏やかに戻っていて胸を撫で下ろした。
少しは気が紛れてくれただろうか。何か声を掛けようかと思ったら、「ルカ」と久し振りに名前を呼ばれた気がしてぴくりと肩が跳ねる。
「何?」
「俺、さっき嘘ついた」
彼の言う『さっき』がいつの何を指すのかわからず、首を傾げた。
「何のこと?」
「相手は確かに他にも色々いた」
静かに呟かれた告白に身を乗り出して耳を傾ける。
「でも、俺の腕はもう随分と抱いてないよ」