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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「……そうなんですか」
「ええ。意図を汲めない人相手だと怒鳴ったりもするのよ。モデルでもスタッフでも」
「見たことないです。迫力ありそう」
「もう大変。だいぶ丸くはなったけど……」
視線を落とした彼女が言葉の先を言い淀んだのがわかって、私は首を傾げた。
「……違うわね。こんなこと話したかったんじゃないのに」
彼女は呟きながら自嘲を込めて微笑む。
ああ、そうか。結衣子さんだってきちんと同意していた訳じゃない。突然のことに戸惑うのは彼女も同じ。
さっき稜くんに切り出せなかった私と同じ。取っ掛かりを探してる。
「初めてなんですか?ああいうの」
私の問い掛けにほっとしたように息を吐いて、「初めて」と零し、膝を軽く抱き寄せた。
「衝動をぶつけられることはあっても、人前で、撮影で、なんてのはね。余程不満が溜まっていたのか、別の意図があるのか、聞いても何も答えなかった。ただ『抱きたかった』とだけ」
「でもこの前も瑛二さん結衣子さんを連れて……」
「あれは……最初の時のこと彼に思い出させる真似したからね。しょうがないと思ってるの。でも今日のは……少し変ね。撮影の時の緊縛はあんな本気で縛らないから」
曇っていく表情を見ていたら、私のそれもつられていってこっそりと溜息を吐く。
彼女は知らないままだろうか。午前にいたという彼女に似たモデルのこと。それも瑛二さんに影響を与えているかもしれない。
「動画、撮ってたのね。後で気付いてびっくりした」
「あっ、ごめんなさい。緊縛撮ろうと思ってたんだけどその……なんとなく置いてきちゃって」
「ううん、いいの。どんな光景を見せていたのかよくわかった。気付かせてくれてありがとう。それから、ごめんなさい。私がちゃんと自制出来たらこんなことにはならなかった」