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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
頭を下げて謝る彼女に対し、返す言葉が見つからなくて答えに窮した。
そこに関して結衣子さんが謝る必要があるのかもわからなかったし、かといって瑛二さんに謝られたとしても困る。するとは思えないけど。
それに稜くんの感情を知ってしまった今、とても空虚なものにも聞こえた。
更に私に対して言った、瑛二さんに抱かれたかったら遠慮するなと言う言葉。
そんなことしたら今の状況をより複雑にするだけだ。益々意図がわからない。
「稜くんにもみっともないとこ見せちゃった。申し訳ないことしたな」
空虚さの中静かに湧いたのは、溜め込んでいたフラストレーションの末の、小さな怒り。
もしも彼女が稜くんのそれを知ってるのなら、どれだけ残酷なことをしたのかわかっているはずだ。
私、知ってるんだよ結衣子さん。彼としてることも彼の気持ちも。だから聞きたいのはそんな言葉じゃなくて、
知っているかどうかと、ふたりの間を行き来する理由。
「……稜くんの何に対してですか?」
そこを知らなきゃ、何を聞いても虚しいのは当然のこと。
「……何、って」
「私さっき、稜くんとしました」
この程度の情報開示がどのくらい彼女に効果を及ぼすかは未知数。
でも、静止していた結衣子さんの目は、みるみるうちに大きく見開かれた。
少女みたいだ。隠し事、きっと向いてない。だからいつも突飛な言動で煙に巻くのかもしれない。
瞬きで伏せた目、そのまま薄く開けて彼女は寂しげに微笑む。
「……そう。言わなくてもいいのに」
「言わなきゃ結衣子さんも教えてくれないと思って」
「ちゃんと問われれば誤魔化したりなんてしないわよ。なあに?」
「さっきの質問の通りです。抱かれてわかること、結衣子さんにだってあるでしょう?」
正確には私は、彼に抱かれた訳ではないし、話してもらっただけだけど。
言う必要なんてない。