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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「……驚いたわ」
「そうですか?」
「遥香ちゃんは変化を恐れないのね」
「怖いですよ。でも、私には失うものはないんです。結衣子さんには、たくさんあるかもしれないけど」
「ごめんなさいね、少し待って」
返事を待たず私から背けた顔を両手で覆い、彼女は深く息をする。
どこまで汲んでくれるだろう。
「先に質問をしてもいい?」
掌で覆われたままの口からくぐもった声がした。
「はい」
「どっちも知った?」
「3人の関係と彼の感情って意味なら」
「ならいずれにしても限界なのね……」
再び大きく溜息を吐いて、彼女は顔を上げた。吹っ切れたような表情に訝しむと、曖昧な笑みを返される。
「……なんですか?限界?」
「私たちの関係に何も問題がなければ遥香ちゃんが知ることはまずなかったでしょう。故意でも偶然でも漏れたのなら潮時ということ。まさか、こんな時なんてね」
自分の言葉に納得したみたいな頷きをひとつして、漸く彼女とちゃんと視線が交わった。
「潮時、って、そんなあっさり?」
「きっとね。元々は、3人にとってとても都合のいい関係性だったわ。瑛二くんは出張緊縛が軌道に乗り始めてたし、私は店を持って、稜くんは瑛二くんに緊縛術を教わりながら一緒に働いて。抑圧の一方で発散が出来てしかもお互い知ってる上に不可侵なんて」
「そうかもしれないけどなんで……だって結衣子さん、瑛二さんのこと」
「愛してるだけよ。そういう関係でもないしその程度のこと他の人としない理由にはならない」
「じゃあ、稜くんも本当に……」
「彼も彼で他に相手はいたわね。とは言えそれぞれを必要とする理由があったからここまで続いたというだけ。3人してほんと、酷い有様」
困ったようにくすくすと零し、それは悲しそうな笑みに変わる。