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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「……3人でいる時はそんなドライな感じには見えませんでしたけど」
「みんなそれぞれに愛があるんだもの。尊敬も尊重もしてるしドライにはなりきれないわ」
「元々はってことは、今は都合が悪いと?」
「もう都合どうこうの問題じゃない」
結衣子さんが湯船に立ち、縁に腰掛けた。縄の跡がうっすら残った胸を晒け出して。
「今の状態は報いね。本当は私がどちらかを選べば良かったのに、ふたりともその必要はないと言ったからそれに甘んじていただけよ。感情の変化の兆しに気付いた時点でどうにかすればよかったのに怠った、報い」
「それじゃあ、稜くんのことは……」
「……冷静で、意外と熱くて、私に足りないものを全部持っている人。いつもね、私が欲しいと思うことを先回りしてくれちゃうの。正しければ褒めてくれて、間違えば叱ってくれて、気付けば随分、甘えてる」
急に愛おしそうに話し始めて、今度は私が目を見開いた。
額に浮いた汗を拭って私も縁に座る。手首の跡がかなり薄くなっていた。
「ごめんね、たったひとつ答えるのに時間を掛けてしまって。だって誰にも言ってないんだもの。そのくらい、口にするのが怖いのよ」
答えなんかもう、聞かなくてもわかったようなもの。
だけど、私は首を横に振って答えを視線で促す。彼女が天井を見上げ大きく息を吸って吐き、私を向いた。
「申し訳ないと思ったのは、彼の私への気持ちに対してよ。知っていながら、私は稜くんに応えることもせず瑛二を拒絶出来なかった。カナちゃんと同じようなことしてしまったわ」
漸く得たそれは煙に巻かれることもなく、事実を彼女が受け入れている証だと思った。
「……どうして」
「彼の最初の変化に気付いたのは、1年近く前。なんとなく他の人の気配が消えて、あれ、って思った。接し方も触れ方も表向きは変わらないはずなのにどこか違うのね。そんなはずないって何度も思ったし思おうとしたけど触れるほど確信に近付いて……最初にこみ上げたのは嬉しさだった」
「え……」