この作品は18歳未満閲覧禁止です
![](/image/skin/separater35.gif)
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
![](/image/mobi/1px_nocolor.gif)
ふる、とひと度肩を震わせて、それも敵わなくなった。
凄絶に観衆を見下ろしていた女王が吐露する不器用な心情。
もっとシンプルに飛び込めたはずなのに。本来なら、彼女の望むまま。
ぽろぽろと涙を零す結衣子さんが本当に少女のように見えて、思わず彼女の手を取った。
潤んだ目に見上げられて胸が痛む。
こんな涙、流させちゃ駄目だ。
「……遥香ちゃ」
「出ましょう。結衣子さん」
「っ……」
答えを聞かないまま湯船から連れ出して、シャワーのお湯を丁寧に彼女に浴びせる。
華奢な肩に、背中に触れ、涙に濡れた顔も流し、自分も浴びた。もう無性にやるせない。
「なんで……」
「出るだけです。のぼせちゃうし」
また手を引いて脱衣場へ向かい、タオルを頭から被せる。されるがままの彼女はやっぱり、少女みたい。
大人になる過程の中で取り落としてきた幼さが露呈しているよう。
稜くんの言ってた通り。彼女は、『普通』の女性なんだ。迷いも戸惑いも苦しみもする。
ナイティに着替えた結衣子さんを見遣ると、まだ眉根を寄せていた。
「遥香ちゃん」
「……ちょっと怒ってました。結衣子さんに」
Tシャツに袖を通して彼女に向き直ると、静かに「知ってたわ」と返される。
「でも、聞いてよかったです。結衣子さんもつらいの、わかったから」
「いいわそんなの、怒ってくれた方が私も」
「楽でしょう。でも、知っちゃったら……怒り続けるなんて出来ない」
ずっと硬かった自分の表情がやっと緩んで、私は彼女へ一歩近付き抱き締めた。
「は、るか、ちゃん……?」
湯上がりのぽかぽかする身体。普段は高めのヒールもあって大きく見えるのに、今は私より少し小さい。
結衣子さんを縛っているのは、瑛二さんだ。
何年も掛けて彼が施した綺麗な縄。彼女を綺麗にする為の縄。
私の緊縛のポリシーは、解放すること。
今は縄は持ってないけど、抱くための両腕ならなんとかある。
![](/image/skin/separater35.gif)
![](/image/skin/separater35.gif)