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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク

むっとされたのは一瞬。
彼はすぐに首をひと振りして、「一応貰っておくよ」と告げフライパンを握った。
心なしか、雰囲気が和らいだ気がしてほっとする。
その内キッチンに結衣子さんが現れ、挨拶と同時にトースターが鳴りマフィンが焼きあがった。
私たちふたりの手でお皿に並べられた朝食に彼女は嬉しそうに笑い、3人でテーブルについた。

「稜くん、瑛二さんは?」
「データバックアップと荷造りしてたよ。昨日のケータリングの残り食べながら」
「ジャンキーねぇ。こんなに美味しいご飯があるのに。はぁ、至福」
「ここで撮影すると大体そうだし。今度はひと通り荷造りしたら家で早く作業したくて『帰る』って言い出すんだ」
「そうなの?なんか手伝わされるかな……」
「かなりの枚数撮ってるからね、片付けも含めて可能性はあるんじゃない」
「そっか。まあ休みだからいいけどー……」
「障子の奴、カナが綺麗だった。あと満も意外とかっこいいよ」
「ふうん。じゃあまあ、楽しみにしておく」
「満くんはあの軽薄な所がなくなればいいのにねえ」
「あいつのあれは性質だから。ルカくらいだよ、まともに相手してる女性」
「ええ、私?」
「大体は結衣子さんみたいに呆れて流しちゃうからね」
「別に悪い人とは思ってないんだけど」
「そういう所だよ。お人好し」
「そーよう。私適当にあしらっちゃうもの。そこで本当に損してるわ彼。見てくれは悪くないのに」

お喋りが弾む。
昨夜あんなことがあったのにふたりとも普通。
これまでもきっとそうやって互いのことに不可侵でいたから、こじれていったのかもしれない。
でも今日は、ふたりきりになったら話したりしてくれるといい。
食べ終えて片付けをしている所に漸く瑛二さんがPC片手にあくびをしながら現れた。

「瑛二さん。おはよう」

テーブルを拭く手を止めて声を掛ける。

「おはよう。朝飯終わったか」
「うん。瑛二さんは荷造り終わり?」
「ああ、車に詰め込んだ。お前の用意が出来たら帰ろうと思うけどお前今日このまま手伝える?」

言ってた通りだ。そしてやっぱり手伝いもあるらしい。

「いいよ。これ終わったら支度して出れる」
「わかった。ここで作業してるから行けるようになったら言え」

端的に言うとPCを開いて真剣な表情で画面に向かい始めた。
随分ストイック。焦りでもあるのかと思うくらい。
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