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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
片付けと身支度も終えてキッチンに来るともうみんな集まっていて、戸締まりをしてアトリエを出る。
瑛二さんの車に乗ろうとドアに手を掛けた時、隣に停まるコペンの前で稜くんが「結衣子さん」と呼び掛けた。
「なあに?」
「俺が運転していいですか?」
「……稜くんが?どうして?」
「結衣子さんの見てる景色、見たい」
覚悟を決めたような顔つきと口振りに思わずドキリとして、これ以上聞けないと慌てて車に乗り込む。
閉めたドア。ウインドウ越しに、彼女が車の鍵を差し出すのを見た。
瑛二さんは後ろの荷物を最後に確認していてその様子は見えてないみたい。
複雑な気分。纏まっては欲しいけど、瑛二さんは瑛二さんでまた別の想いを抱えることになるだろうから。
運転席のドアが開いて彼が乗り、車はすぐに走り出した。
「あれ、ツーリングみたいにして帰るんじゃないの」
「あの車目立つから嫌だねこっ恥ずかしい」
「凄かったよ昨日。結構な注目の的なんだね」
「だろ。それにさっさと帰って作業したい」
そこまで逸るなら、それだけいいものが撮れたということかな。
早く見たいと思う一方で家に着いたら聞きたいことも聞けなくなりそうな予感がして、昨日の意図を問おうと彼を向いた。ら、
「昨日のやつ、動画撮ってたんだな」
と、先に問われて意気込みが空振った。
「あぁ……うん。緊縛シーン撮りたかったのに、あんなことに……」
「いや、面白いもんだと思った。あいつだけのならともかく自分たちのなんて撮らないからな」
「依頼では撮るのに」
「目的がない。でも今回のは悪くなかった。他に撮ってた分も興味深かったよ」
人の気持ちも露知らず嬉しそうに私を褒めるから、居心地悪くて身じろぎしながら「それはいいけど」と小さく返す。
「なんで、私たちに見せたの?結衣子さんとの……」