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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク

それ以上を言い淀んで上目がちに瑛二さんを窺った。
彼は私を一度ちらと見て、無表情のままウインドウに頬杖をつく。
口は引き結ばれ、視線はひたすら正面。カーステレオもラジオもない無音の車内が重い沈黙に包まれた。
結衣子さんにも語らなかった理由。
答えないのか答えたくないのか、いっそ、答えなどないのか。答えられないなら余計意味がわからない。
取り下げようか考え始めた時、「いずれ」と聞こえて眉を上げた。

「……いずれ?」
「察するだろ。今お前が知る必要はない」

突き放した言い方。
なぜ、と思ったけど、それ以上の追求を拒絶しようとする意図が読み取れて口を閉ざす。
重くなった空気。殆ど変わることなく、彼の家に着いて淡々と荷解きと片付けを手伝い始めた。
それもひと通り済むかという頃、ガリガリとコーヒー豆を挽く音と共に漂ってきた香り。
やっと雰囲気が弛緩した気がして、小物類を棚に戻し終えカウンターのスツールに腰掛けた。
傍らのノートPCに表示されているのは蝶を口にした結衣子さんの横顔。イミテーションのはずなのになぜだかリアル。
刺さったUSBメモリが書き込みをしているのか、端でピカピカと光る。

「色々ありがとな。助かったよ。いいもん撮れたしアイディアも面白かった」
「こちらこそ、いい勉強になりました」
「それ見てていいぞ。完全じゃないけど厳選はしてある」

言われてマウスを操作した。開いているフォルダにはそれでも膨大なデータがある。
時間順でソートを掛けサムネイル表示。見ていない午前中の分から、気になった絵だけをぽちぽちと選択していった。
最初の方はモデルさんたち。さすが綺麗な顔と身体で、掛けられた縄もよく映える。彼女たちに絡む稜くんたちも得も言われぬ色気が漂ってかっこいい。
庭で撮られた野外露出は、物干しに括り付けられた女性が背を仰け反らせて喘いでいる。本気なのか演技なのか、区別がつかない。
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