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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
語りながら思い出しているのか、彼女の視線は女王のそれになっている。
稜くんをちら、と見遣ると、聞いてはいるようで時折彼女の方を見ていた。
「数回繰り返したらそのまま出ちゃいそうなくらい。『これは何?』と尋ねたら、とてもサディスティックな気分になって酔い痴れそうになったの。彼は身体を折って懇願したわ。『待って、でも、もっと』って」
「それだけで、女王様に」
「正確にはその後にプレイ紛いのことをした時だけどね。その時に思い知ったのよ。どれだけの愛情を掛けられていたか」
その愛情の持ち主は瑛二さんでは、と思わず口を引き結ぶ。
稜くんの前でしていいの?
思案したけど、彼女はさばけた調子でいる。既に話したことなのかもしれない。稜くんも無表情のまま淡々と指を動かしていた。
「見てきたならわかると思うけどね、サドプレイをする時は相手の一挙手一投足全て見てる。タイミングやすることさせること、その緩急や強弱もね。それまで私はサディストなんて勝手にやってるんだと思い込んでた」
今でこそ慈愛を持った女王。プレイ中の彼女はいつも口元に微笑みを絶やさずに、マゾヒストを心酔させるけど。
「もちろんそういう人もいるけどね」
「女王様になるまで大変でした?」
「それなりに。技術はもちろん仕草や言葉遣いとかも。一本鞭はかなり練習したなぁ」
「簡単そうに振ってるように見えるけどやっぱ難しいんですか」
「振ってみる?持ってきましょうか」
「え、ええ?そんな……」
拒否する間もなく結衣子さんは跳ねるように立ち上がってL字の向こうへ駆けていく。
なんて急な。戸惑いを浮かべていたら向かいから視線を感じて見上げると、稜くんがPCを閉じて私を見ていた。
「……何」
「ルカ、女王様になるの?」
「うーん……緊縛習った当初はそんな気持ちもあったけど、今はちょっと違うような」
「だよね、サドマゾの嗜好は別としても女王様感ないし」
「うっ、知ってるよ……」
「それよりは緊縛師の方がいいと思う。女王様と違って調教する訳じゃない」
「女でそれ?需要なくない?」
「ハプバーやこういう所で講習とか、撮影用とか、何でもありだと思うけどね。君器用だし感覚もいいし、緊縛でなら俺や結衣子さんも超えていけるよ」
片目をすがめ、膝の上で頬杖をついて、稜くんは淡々と私に告げる。