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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
「……嘘。褒めすぎ」
「メリットがなければ嘘は言わないって。信用ないな」
「そりゃそうだよ。もう前科持ち」
「あー、はいはい」
打ち消すみたいに軽く振られた手。邪険なそれにむっとした視線を返すと彼の目は私の肩越しに結衣子さんを捉えたらしくすぐそちらへ向けられた。
振り返ると一本鞭とバラ鞭を抱えた彼女が歩いてきて、マットの上にそれらを置く。
バラ鞭を手にスツールをひとつ転がして、私たちから離れた場所にそれを配置した。
「バラ鞭って結構音しますよね」
「その割には痛くないの。利き手に持ったら逆の手に束を載せ丸を作って通すようにして振り下ろす」
言葉通りに彼女がスツール目掛けて振り下ろしたバラ鞭は、乾いた音を立てて店内に響く。
「どうぞ」
受け取るとなんだかとても背徳的な気分が湧き上がって、説明されたそれを真似てみた。
けど、最初から音が鳴るはずもなく、結衣子さんに持ち方や手首の動きも直されながら数度やっていると綺麗な乾いた音が鳴り響くようになる。
「いい音」
稜くんがクッと加虐的に嗤って言った。
「うん、じゃあ次は一本鞭いってみましょう。1.5m。打撃部分が細いから当たるとかーなり痛いけど、好きな子もそれなりにいるわね」
「常連さんでもいますもんね。見てたけど痕が痛々しすぎてつらくなる」
「始めたばかりの時はそういうのが好きな人に育てて貰ったわ。いいマゾはいいサドを育てるから」
これも動きの説明を受ける。流れるような仕草のウィッピング。真似てみたけれどまともにスツールにすら当たらない。
力加減、全然わからなくて、救いを求めるように結衣子さんを見た。
「そんなもんよ、最初は。筋力も必要だしね」
「もしかして結衣子さんの腕や肩周りが何気に筋肉質なのってもしかして……」
「これのせい。鍛えもするけど左右差つかないように両方満遍なく振るのよ」
苦笑いを漏らして彼女は私の手から鞭を取る。
「まあ、慣れれば……」
手振りで下がるように言われて距離を取った。彼女が向いた先は壁。
自身の緊縛写真のパネルを目掛けて振るった鞭は、見事それを捉えた。
パネルが床に落ち彼女は目を丸くする私を振り返って「こんな感じ?」と小首を傾げて妖艶に笑う。