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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
「結衣子さん、壊れちゃうよそんなことしたら」
「そうしたら新しいの作って貰うわ。稜くんのも一緒に」
「それは遠慮したいな……」
「あら、見たでしょ?綺麗じゃない」
落ちたそれを拾い上げ、結衣子さんは元の通りに戻した。
鮮やかな鞭の軌道。まるで手の延長みたいだ。ウィッピングなのにスパンキングのよう。
痛くて苦しいと思うのにそれでも彼女が求められるのは、技術に裏付けされた慈愛があるからで。
カナちゃんを縛った時は確かにそういう感情が溢れてた。身につけた緊縛術で、解放出来るって信じてたから。
だけどやっぱりそれより先の、サドプレイや調教なんて出来る気はとてもしない。
「練習したかったらいつでも付き合うわ、遥香ちゃん」
スツールもテーブルに戻して座った結衣子さんがマグカップを手に微笑む。
私も隣に戻り、さっきまで手にしていた鞭の重さを思い出して手のひらを見つめた。
「……私は、女王にはなれません」
せめて悲観的に聞こえないよう、穏やかに微笑み返して告げたそれは、諦めとかでは全くない。
「みんなのプレイは沢山見てきたし、いつもドキドキするけど、やっぱり私には違うって思う。さっき稜くんにも言われたけど、ほんとその通りで」
「その道を断つつもりで言ったんじゃないよ」
「わかってるよ。緊縛は好きだしもっと覚えたい。でも女王様はもっと、人間が好きにならないと出来ないなって」
考えた末のひとつの想いだった。どれだけ思考を重ねても、技術を覚えても、もっと本質的な部分が足りない。