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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
「私、そういうの真剣に考えないでなんとなく生きてきちゃったからやっと気付いて。だから今の私じゃまだ出来ない」
コミュニケーション。結衣子さんに以前言われたそれが、今になって大きな意味を持つ。
接してるだけとか見てるだけじゃなくて参加しないとしょうがない。
カナちゃんに触れた時も、稜くんや結衣子さんに触れた時もそうだった。必要なのは、痛みの共有。
殊、SMに関してなら尚更。
それはもしかしたら、瑛二さんにだって。
「……大切な気付きね」
「はい」
「でもね、プレイとしての女王はともかく、みんな女王にはなれるものよ」
背筋をぴんと伸ばし、手を膝の上に綺麗に揃えて彼女は毅然と言った。
「みんな?」
私が繰り返し尋ねたそれに「そう」と短く答え、私を窺い見る。
意味がわからず瞬きを数回しても、見据えられるだけ。
「どういうことですか?」
「私もまだ途上。精進しなくちゃね、お互い」
重ねて聞こうとしたけど、カーテンの向こうの方から女の子たちの声が微かに聞こえて飲み込んだ。
彼女を見ても視線はもう私の方になく、稜くんを見てもいつものポーカーフェイスのまま。
「さ、開店準備しましょう」
ぱっと切り替えて立ち上がった結衣子さんは既にオーナーの顔になっていた。