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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
腰縄が解かれ、胸縄に手が掛かる。
願望を抱いた人たちは、自身の中であらゆるシチュエーションを想像してる。
それは、調教だったりレイプだったり複数にされることだったり様々で。
「それを引き出すのも、緊縛師の腕でしょ」
「まあね。とは言え邪魔しないようお膳立てしてるようなもんだ。でもお前はほんと純粋に縄が気持ち良さそうにするから縛り甲斐ある」
「……遠回しに変態って言われてる気分」
「いいじゃねえか、結構なことだ」
何度も腕を身体に回されて、拘束が解かれていくのが、少し勿体ない。
吊ったからあまり長時間はこのままにはしておかないって、わかってはいるけどそれでも。
あとひと月。離れてしまったら次に瑛二さんに逢えるのはいつになるだろう。
手首が解かれて自由になった代わりにふと、味わったことのない名残惜しさに突然襲われた。
「変な感じしないか?腕とか特に」
する。凄く。腕とかじゃなくて、胸の中が。
触れられなくなるのだ、もうすぐ。
縄を解かれたら、曖昧に受け止めていた彼の不在という近い未来を、瓦解したように事実として実感してしまった。
じわりと血が通って熱くなった腕。両方掻き抱いて感触を確かめていたら、
「ん、痛む?」
瑛二さんが尋ねながら私の肩に触れた瞬間、びくりと身体が揺れた。
「……ルカ?」
それならその前に私はこの緊縛師の世界を味わってみたい。
この先もこれを続けていくのなら、自由を与える彼の全てを一度。
周りのこと気にしないで、身体全部で快感に身を投じてみたい。
この身体を、差し出して。
「大丈夫か?」
「瑛二さん、離れる前に」
抱いていた腕を振りほどいて彼の腕を掴んだ。最初は触れることすら怖かったその腕を。
胸に抱くのは覚悟。この猛禽類は決して甘くない。
『遠慮する必要はない』と言って貰えててよかった。躊躇う手間が省けたから。
確かに衝動なんてのは、
「……私のこと、綺麗にして」
思ってもみない瞬間に訪れる。