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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
「部屋広くなったね」
「いい機会だ。物があっても埃被るだけだからな」
「瑛二さんらしい」
バッグを置いてコートはハンガーに。壁際に掛けてスツールに座る。
「準備は?」
「仕事に関しては細かいの以外ほぼ完了。あとは家関連くらいだ」
コーヒーが注がれてエクレアと共に目の前に置かれた。
初めて来た時の緊張感が思い出されて心なしか固くなる。あの時は瑛二さんを縛ったけど、今日は違う。
「ありがと。頂きます」
「こちらこそご馳走さん」
抱かれる為に来たのだ。
「あの道具類はどうするの?持ってくにしても限度あるでしょ」
「当面使うのだけ持って行って残りはユイか691に渡すよ。お前欲しいのあれば先に持って行け」
「いいの?練習用のそろそろ欲しいと思ってた」
「いいよ。前やったのもう痛んでるだろ」
あれも最初に来た時に貰ったもの。毛羽が目立ってきて人には使えない。
会話が途切れると音のないこの部屋はとても静かで、不思議とそれが気にならなかった。
でも、今日は、違う。
エクレアとコーヒーをなるべくゆっくり口に運ぼうとした。
期待と不安と緊張感。散々彼のプレイを見てきただけに、自分の身に起こることが想像つくようでつかない。
瑛二さんはもう食べ終わって、ゆっくりとした私の食べ方に呆れたように息を吐く。
「別に喰い終わってすぐになんて考えてねえよ。好きに喰え」
見透かされてた。まあ、当然かも。
だけど言われてほっと胸を撫で下ろす。
時間はないけど、一応ある。
「……うん」
「でもなんでそう思った?吊ったあの時の衝動的なものだけじゃないだろう?」
「まあ、同行するようになってプレイそのものより瑛二さんの世界観を見てたからってのもあるし、自分が一度味わったらどう変化するだろうとも考えたよ」
「で、ユイが焚き付けたか」
「結衣子さんは……撮影会の日の車の中で『瑛二くんに抱かれたかったら私に遠慮しないで』って言われただけ。稜くんにも『抱かれてみれば』って言われたし」
「なんだよあいつら……こぞって面倒くせえことしやがって」
「でも、吊られたあの時に衝動のまま瑛二さんに言えたのは、ふたりがいたから」