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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
「旅行行った時だな。可愛くなったもんだ」
その次には、寄り添って笑うふたり。恋人にだってなろうと思えばいつでもなれただろうに、それでも選択しなかったふたり。
目にするだけで泣きそうになる。だけど振り切ってその先を見た。私が解放しようとした彼女を、見届けないといけない気がして。
「……この辺からS転後でしょ。表情が違う」
「そう。見事な転身だったね。顔も仕草も魅せ方も口調も全部変えてきた」
「結衣子さんのサドプレイでしたことあるの?」
「戯れにな。綺麗だとは思ったけどお互い笑って駄目だった。変わんないね、本質的な中身と嗜好は」
「ああそう……」
次第に今私が知る彼女の色が濃くなる。当初の頃より枚数も減って、それはまるで距離そのものも離れたみたいだった。
最後の1枚は、撮影会の時の蝶を口に載せたもの。先の空白を見てぱたんと閉じ、元通りしまって彼に向き直る。
「ありがと」
「おう」
「こんなに緊縛写真あるならもっと早く見せてくれれば良かったのに」
「あー、そうか」
組んだ脚の上、頬杖をついて、瑛二さんは底深い光を宿した視線で私を見下ろしていた。
あ、やばい。
多分、くる。
「……遥香」
呼ばれた名前に一瞬で緊張が走り、身体が強張って息を呑む。
「綺麗にしてやるから脱げ。遥香」
私が、彼の世界に支配されようとしてる。
カーテン半分とは言え光に照らされた室内。
「あ……かるいんですけど、部屋」
「そうだな、まずは立とうか」
抗議は軽く流され、促されるままその場で立ち上がった。見下ろしているのに返ってくるのは余裕の表情。
「二歩後ろ」
端的に言われ、抗う術もなく恐々下がる。手振りひとつで『脱げ』とまた言われた気がした。ずっと見てる。私の全身。
ごくり、と喉を鳴らしてカーディガンから腕を引き抜き落とす。ここまではいい。問題は、この先。それ以上の行動を理性が拒絶する。