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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
「見、ないで、よ……」
「出来ない相談だ。明るいのが嫌なら目隠しでも」
縄の下に伸ばされた手がアイマスクを掴んだ。そんなの無意味、どころか余計に恥ずかしい。イマジネーションの世界に無理矢理落とされてしまう。
返答出来ずにいれば嗤われて下を向く。視界の中で彼の脚が私の傍に寄った。わざとらしく眼前に差し出した掌が顎を撫で、勿体つけた後ぐっと力が篭って上を向かされる。
「味わえ。俺の世界も、自分の世界も」
視線はまるで稲妻。低く放たれたねっとりとした声と相まって、情欲に侵される。
まだ立って下がってカーディガンを脱いだだけだというのに、吐き出した溜息は随分苦く熱かった。
ティアラでも載せるような丁寧な手付きでアイマスクをされて視界は闇。気配が遠ざかってベッドのクッションが沈む音がする。
言葉が継げない。抵抗を諦め陥落して、スカートのファスナーを下げてするすると脚を引き抜いた。
次いでタイツ。脚が完全に空気に触れて、コットンシャツのボタンに手探りで指を掛ける。
寒くもないのに震えながら、上からひとつずつ。見えない視線に煽られて、肩で息をした。
「手を止めるな」
「っ……」
シャツを床に落とす。下着だけになって、羞恥心が一気に押し寄せた。
意味もないのにアイマスクの中で目を閉じて背中のホックを外す。だらしなく垂れ下がるそれも床に落として、手は下へ。腰と布の間に滑り込ませた指をそろそろと太腿へ沿わせていった。
左足を抜いて、右足首に引っ掛かるそれを無造作に避ける。早くも息が荒くなり始めていた。
身につけているのはもうアイマスクだけ。頭の中には恥辱と不安と、それから……
「これまで散々見てきたな。どうだ、見えない中で見られる側に立つのは」
想像するのは、その散々見てきた彼の視線。
熱くて慈愛に満ちていて、どんな恥態を晒しても最後まで必ず見てる視線。