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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
目を覚まして感じた光が人工のそれに変わっていて、驚き瞬いた。うつ伏せ状態、顔は窓の方向。
カーテンはぴたりと閉じ、その向こうは夜。ぼんやり灯る間接照明。もぞ、と顔を逆サイドに向ければ、枕とクッションを背にスマホをいじる瑛二さん。
私に気が付いて視線が合う。
「起きたか」
終えた時はまだ夕暮れだったような、と思い出して愕然とした。
「……何時間寝てた?」
「そんな経ってねえよ。1時間もない程度」
持っていたスマホをベッドサイドに置いて、ミネラルウォーターのボトルを差し出す。
「飲む?」
手を伸ばして受け取った。起こそうとした身体が随分と重だるい。
「なんか凄い脱力感……」
「縄酔い後はよくあるから気にすんな。敏感になったり眠くなったり。この先、もしさせたらちゃんと休ませてやれ」
「そんな簡単に出来る気しないんだけど」
「簡単じゃないね。腕前、信頼感、縛り手と受け手同士の慣れ、その他色々」
喉を通る水の冷たさを心地よく感じながら、降ってくる声を聞いた。
身に起こったことを反芻して飲み下す。
「瑛二さん」
ボトルを返して声を掛けた。
「ん?」
「いつから離れること決めてたの?」
「いつって程具体的なもんはなかったよ」
私から受け取ったそれを瑛二さんもひと口含み、溜息混じりに「まあ、」と声を吐き出す。
「チャンスがあればいつでもよかった。それこそ数年前から考えてはいたな。ずるずるしてたら今になったってだけで」
「結衣子さんがいたから?」
「それもある。けど……潮時だって思っただけだ」
彼女も使ったそれに引っ掛かりを感じて「潮時?」と繰り返した。
3人が不可侵を決め込んで続けてきた関係のことなのだとしたら、やっぱり瑛二さんは、気付いていることになる。