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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
あのふたりは想い合ってるからいいかもしれない。
だけど、瑛二さんは。
「……本当に、それでいいの?」
ベッドに肘をついて上体を起こし、覗き込んで問う。
私の言葉に瑛二さんは一瞥を寄越して、乾いた声で呆れたように笑った。
「知ってたのか」
口振りがあまりにさらりとしていて面食らう。
「まあ、成り行きで」
「どこまで知ってる?」
それでも薄く開いた目の奥、ぎらりとしたものが見えて臆しそうになった。
堪えて、意を決して口を開く。
「……瑛二さんの、気持ち以外」
十分に伝わるはず。
知ってることも、知りたいと思っていることも。
目を逸らさずにいたら、また零れた乾いた笑い。寂しく響いた気がして眉を寄せると「そんな顔するな」と宥められた。
「なんで?瑛二さん本当に」
「いいも何も、知っての通り不可侵だ。邪魔する気はない」
「そういうことじゃない……っ」
まるで懇願でもするように絞り出す。
恋人じゃないから、不可侵だから。
だけど知ってる。名前を付けられなくても、彼が彼女を想っていること。
「……言いたいことはわかる。でもそれこそ無理だった。どんなに抱いても満足出来ない」
「じゃあどうして縛り続けてきたの?お互いに、こんな長い時間」
「それが必然だっただけだ。俺も結衣子も何度他の奴の所に行ったって、結局互いを求めて戻ってくる。いっそ結衣子がどっか行ったまま戻って来なきゃいいって何度も思ったよ。でも、あいつは結局俺を受け入れる。例え心を許した奴の前でもな」
「え……?」
一瞬、彼が言ったことが理解出来なかった。
同じようなことを結衣子さんが言っていたこともそうだけど、それだけじゃない。
心を許した奴の前でもって、アトリエの、あの時の、
「まさか、……試、したの……?」
「ああ」
身を乗り出し、緩やかに構える猛禽類と相対する。
衝動的なものだけじゃなくて、そこまで意図していたってことは。
「じゃああの時結衣子さんを抱いたのって、稜くんに、見せ付けるため……?」
「そうだ。稜が好きな女はこの先もずっと脳のどこかに俺を住まわせ続けるからな」