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女王のレッスン
第7章 ■最後のレッスン
「別に、試す方法はなんだって良かった。殴り合おうがなんだろうが稜の気概がわかればな。結衣子似の女を使ったのが間違いだったね。他でも撮れるって思ってたんだが結局あいつを撮りたくなって衝動に任せただけだ」
「でもそれじゃ、瑛二さんは」
「何も変わらないよ。それに案外俺は安心してんだ。あの意地っ張りを受け入れる男がすぐ傍にいることに。だからお前が泣く必要はない」
なんでそんなに穏やかでいられるのかわからなかった。
泣く必要ないなんて、無茶言わないで。
短い期間ではあるけれど私だって、みんなのこと大好きで、
みんなそれぞれが抱えた想いを知ってしまって
痛みを知ってしまって
だけどこの人が抱えていくものや手放すものが、私にとっては一番痛い。
「全員がどっかで『無理』って思ってた結果だ。これが正しいかはわからないけど、必然なんだよ」
顔を両手で覆った。
とめどなくぼろぼろと流れて、止まらない。
なんでそんなに、優しくなれるの……
「……感じやすいな、ルカは」
「……放っといて」
「ああ、そうする」
「どうせ瑛二さん、泣けないでしょ」
ひとりになったって、どこに行ったってきっと瑛二さんは泣けない気がした。
だったらせめて今だけでいいから、寄り添いたい。
「……瑛二さんの代わり」
例え彼の中で納得していても、想いがなかったことにはならない。
「優秀なアシスタントで嬉しいね」
力強く肩を抱き寄せられた。
腕の中にすっぽりと収まって、その体温の温かさにまた溢れる。
そうして瑛二さんは私が泣き止むまで抱いていてくれた。