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女王のレッスン
第2章 ■縄師のテホドキ

「どっちでもって、じゃあ特定の彼女とか彼氏とかは……」
「まあーいないね。それこそ学生の時くらい。でもそれで不足はしないから」
「SとかMとかのそれは?」
「そこも相手が望むままに。こだわりはない。最終的に出せたら終わり」
「……寂しくならない?」
「それが怖くなるからこういう所に来ちゃうんだよね」

縛り終えて、顔を上げる。
自嘲気味な訳がわかった気がした。

「今日は、それでここに?」
「いや、あの人に呼ばれたの」

動けない満さんは顎で瑛二さんを差す。
さっきの『わかった』に繋がるのかな。

「……そうですか」
「理由は後でわかるよ。これで終わり?見てもらう?感想でも言う?」
「じゃあ……感想を」
「俺とが最初だからなのかもだけど、遠慮しないでいい。こっちにはそういうの伝わるよ」
「ああやっぱり……カナちゃんにも言われました」

そこだけはもうどうしようもない。慣れるしかないのだろうけど。
ていうかセックス経験もいまいち乏しいから、どうしたら良いのかもよくわからない。

「出来た?見ていいか?」
「……はい」
「縄尻綺麗になってんねぇ。いいことだ」

指を掛けながら瑛二さんは随分と楽しそうに喋る。

「テンションだいぶ揃うようになったな。縄引く時は左右差ないようにもうちょっと意識して」
「よかったー」
「ケチつけようと思ってたのにつまんねえ」
「素直に褒めてくれた方がやる気出るんだけど」
「褒めてるだろうが。卒業間近だな」

目を細めてふっと鼻で笑い、また去っていった。
そうだ。あと1回で卒業になるんだ。

「解きますね」
「うん。これでまだ3回目?十分十分」
「もう精一杯。元々彼氏を縛るはずだったのに今や連れてくるな、ですよ?おかしいでしょ」
「ははっ、らしいね。でも彼氏喜んでるんじゃない?」
「喜んではいます……。でも結局はただのマンネリをなんとかしようっていう悪足掻き、っていうか……」
「理解しようとしてるだけ偉いよ。俺なんて無理よ、こんなの」

満さんは溜息とともに肩を竦めて見せ、笑う。

「理解、されたいんですか?」
「んー、多分?」
「じゃあ私は理解しておきます」

最後の後手を解いて言ったら、満さんは私を振り向いた。

「え?」
「そういう人もいるってこと、私全然知らなかったから。満さんがそうだってこと理解しておきます」
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