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女王のレッスン
第2章 ■縄師のテホドキ
寂しくなるのが怖いと言う彼は、こんなにも寂しそうに笑うから
そんなことくらいしか私には出来ないと思った。
「……嬉しいよ」
「何がですか?」
「やーさしいねぇ。遥香ちゃん」
間延びした声で、口調で、満さんは私に微笑む。
わからなかった。その事実しかわからないと告げただけなのに、なぜ、笑えるのか。
「よくわかんないって顔してるよ?」
「だって、私にはそうするしか出来ないのに……」
「自分の性的な志向、嗜好を拒絶されてきた人間はね、それを許容してくれる人を無条件で好むんだよ。だから嬉しい。それだけ」
「それだけなのに……?」
「それだけだからこそ。心配しないで。Sに徹するならそれは凄く大事なことだから」
肩に触れられた手が暖かくて、思い掛けず鼻の奥がツンとした。
柊平も満さんもカナちゃんも、他の人もきっと、実は色んな想いを抱えてこういう場所に来ていることを、私はとても軽く考えてたみたい。
それはもしかしたら、瑛二さんも。
思考ついでにちらりとそちらを見たら、目を逸らされた。見ていたらしい。
「さて、もう一回する?」
さっきまでの寂しげな顔が嘘みたいに晴れて、満さんはにこやかに笑う。
ちゃんと応えよう、と、私は顔を上げた。
「……はい。お願いします」