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女王のレッスン
第8章 ■女王のドクリツ
その続きは、私。稜くんに目と口を押さえられている長襦袢姿の。
データでは何度も見たけど、こうした形になるとやっぱり違う。自分で言うのもなんだけど、綺麗。
紙面を指でなぞるようにしてから更に捲る。次に控えていたのは、結衣子さんだった。
吐息や喘ぎ声が聞こえてきそうな程の躍動感。縛られて自由を奪われて、それでいて彼女はとても自由。
よく見ると端に白抜きの文字がある。ただひと言、『結』と。何と読んでいいのかすらわからない。
まるでラブレターみたいで心なしか赤面してしまった。見てられなくて次へ行くと、なんとなく見覚えのある後手縛りの背中。
彼方を向いて縛り手に全てを委ねてる姿。
また白抜きの文字。
ここにもただひと言だけ。
『遥か』
あの日のものだと瞬時に理解した。
言葉が出なくて、無性に懐かしさを覚えて、閉じたそれを掻き抱く。
不在になって1年半が過ぎた。気まぐれに来る生存確認程度のメッセージや、共有した内容のチェックはあるけど
声はもう随分聞いていない。
家に行けば稀に帰ってる痕跡があった。
だけど出くわしたこともないし、帰ると連絡がくることもなかった。
そこへ来て、突然の贈り物。
多分私のとこだけじゃないはずだ。間違いなく瑛二さんは彼女にも贈ってる。
「……行かなきゃ」
「え?」
「8 Knot。結衣子さんとこ」
「ええっ?」
「支度して満くん。私そのまま691にも行くし」
一刻も早く行って話したいと思った。これを見て彼女は何を思うのかを。
今から行けば4時には着いて、話して、十分間に合う。
バタバタと用意し、コンデジと写真集をバッグに突っ込んで、彼を連れ立ち家を出た。
傘が必要なさそうなくらい、一気に雲が晴れていく。梅雨明け予報はまだ先。だけどそう遠くはない予感がした。