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女王のレッスン
第8章 ■女王のドクリツ
「どうしてそう言えるんです?」
「確かに私の名前だし縁を結ぶって意味はあるけど、『結び』だとしたら幕引きでしょう?瑛二くんが敢えてあの写真に添えてわざわざ言葉にしたのなら、私はそちらの意味だと捉える」
「でも……」
「それより私はその後に『遥か』が来ていたことの方が意味ありげに感じたけれど」
ふふ、と声を漏らしてはにかむ彼女。
どんな意味があるのだろうと首を傾げてみても、それすらまた楽しそうに口元を抑えた。
「ごめんなさいね、実際聞いた訳じゃないから真意なんてわからないわ。ただ、瑛二くんも大人になったなって思ったらおかしくて」
「全然わかんないんですけど……」
「うん、いいの。気にしないで」
今も結衣子さんの、天真爛漫と優雅な一面をくるくると変化させながら周囲を巻き込む所は変わらない。
彼女独特のペースと感覚で彼女の世界を生きている。
それが時々私を大いに混乱させるのだけど、稜くんに言わせれば『彼女の中では全部繋がってる』らしい。
そう評した彼が3人分のアイスティーを持って戻って来た。
渡されたそれを半分ほど一気に飲んで人心地つく。
「写真集の話?」
「うん。稜くんも見た?」
「見たよ。相変わらず面白くないことしてくれるよね」
「まーたそういうこと言う。一緒にお仕事もしてるくせに」
「写真に文章付けてるだけだよ。本気のアソビって感じ」
「あら?割と楽しそうにしてるのに」
「まあね、いいもの送ってくるんだもん。ほんと狡い」
言いながら片目をすがめ、喉の奥でクッと笑う。
稜くんは瑛二さんが旅立つ前に少し話をしたらしかったけど、詳しくは敢えて聞かなかった。
でもサディスト達は通じるものもそれなりにあるようで、写真と文章の寄稿を共同でしてる。
ポーカーフェイスもクールな姿勢も蛇みたいな小狡い感じも変わらないけど、唯一結衣子さんに接する時の態度は頼もしさを覚えることもあったりして。
このふたりが一緒に暮らし始めて1年以上が経過したせいもあるのかもしれない。
奇妙だった三角関係が終わりを迎えて、それでも彼らは、彼らなりの繋がりを維持したまま。
まあ、とても彼ららしいなと思ってる。
「それで結衣子さん、写真集出来たってことは瑛二さん……」
「帰ってくるみたいね。こないだ久し振りに連絡が来たの」
「いつですか?」
「気になるなら電話してみたらどう?」