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女王のレッスン
第8章 ■女王のドクリツ
彼女の不敵な口振り的に、きっといつなのか知っているんだろう。
「……ハイ」
あんまり電話に手が伸びないのは、話したらとめどなくなるか、何も言えなくなるかどっちかになりそうだから。
今年の始めに話したのを最後に声は聞いてない。
して、みようかな……
理由もある。届いたよって言えばいい。
講習は18時から。もうすぐ17時だから、外に出て、電話して、そのまま691に行けばいい。
少し早いけど、考え始めたら止まらなくなる。
「さ、取り敢えず飾り付けしましょうか」
結衣子さんが輪飾りを手に立ち上がった。
「うん。短冊は適当にまたカウンターに置いときます」
「ペンと一緒にね」
稜くんも彼女に続く。
私は僅かに逡巡した後、「あのっ……」とふたりに声を掛けた。
「……お願い事考えておいてね。遥香ちゃん」
「瑛二さんによろしく」
振り返ったふたりからにこにことニヤニヤが返ってきて、私も思わず口角が上がる。
「いってきます」
バッグを手にして立ち上がった。
「いってらっしゃい」
ふたり分の声を背中に受け、お店の中、小走りになってL字を抜ける。
お尻のポケットからスマホを出して、ドアを開けた。
8 Knotを出て早速、瑛二さんの電話番号を呼び出す。
出てくれるかな。車だったら難しいかも。それとも撮影中とか。なんて適当に考えていたら意外なことにすぐに繋がった。
「ルカ」
半年振りの声。用意が整ってなくて、「ひ、さ、しぶり……」なんて間抜けた声になる。
「久し振りだな。元気か?」
随分と上機嫌そうな声。背後に音もない。どこか建物の中のよう。
「元気。瑛二さんは?」
「変わりないよ。届いたか?」
「うん、届いた。見たよ。綺麗だった。今8 Knot行ってその話してたの」
「そうか。じゃあこの後691か」