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女王のレッスン
第2章 ■縄師のテホドキ

「ちゃんと深く呼吸しろ。大丈夫だから」

そんなこと言われても、困る。
呼吸する手順がわからなくなる。目が霞みそうで、でも止める方法もわからない。

「ああ、もう……」

困ったように言い捨てたと思った刹那、瑛二さんに背後から抱き締められた。

「!」
「力抜いて、落ち着け」
「あ……」

大きな質量の体温に包まれてようやく息を吸って吐く。
数回。繰り返して、元に戻った。
すぐ近くで感じる呼吸に誘導されているみたいだ。

「大丈夫か?」
「ご、ごめんなさい……」
「謝る必要はない。最初はよくある。準備できたら腕を組んで」

耳に流れ込んでくる低い声がやけに心地よくて、言葉に導かれるまま私は両腕を背中に回す。

「いいな?」

催眠術にでもかかったように頷いた。

腕が纏められる。Tシャツと素肌の隙間を縄が通り、あっという間に結ばれた。
左腕、抱き締められるみたいに胸の上を通って右腕、背を這ってもう一周。
背徳感と心地よさが同居してるってどういう状況なんだろう。
テンションを確かめる指が肌と縄の間を通って抜ける。
苦しいような気もして、なのに、解放されてく。

「はぁっ……」

自分のものじゃないみたいな声が、漏れた。

「痛くないか」

またおかしな声が出してしまうのが怖くて首を振る。
カナちゃんの時のそれを思い出す。こうやって確認していたのだと知る。

「んっ……!」

二周目の縄が背で引かれ、手首が上に持ち上げられた。

「キツい?」

また首を振る。息の熱さに喉が焼けそう。
高揚感があって、脳がとろけそうで、下半身がきゅんと疼く。
どうしよう。感じてるみたいだ。

「あ……」

口が半開きになったままで、声が出るに任せた。
縄尻が纏められてる。5分も経ってないはず。なのに。
身体から体温が離れて、正面に瑛二さんが座った。

「……いい顔するねぇ。女王サマにするには惜しいくらいだ」
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