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女王のレッスン
第2章 ■縄師のテホドキ


身体が、いっそ瞼すら重たい。
全身が呼吸器官になったみたいに息をして、ようやく開いた目で隣にいる彼を見た。

「……大丈夫?遥香ちゃん」

私の身体には白いタオルが掛けられてて、満さんは右腕を枕に寝転がってニコニコと私を見ている。

「は、い……」
「気持ちよかった?」

ほんの少ししか経っていないはずなのに、もう遠い気がして即答出来ない。
まるで夢を思い出すかのよう。

「……はい」
「それならよかった。動けそうだったらシャワー浴びよう。頭スッキリするよ」
「そう……します」

胸を押さえてのっそりと起き上がる。
自分がいる場所を改めて知って、今更ながら羞恥心が湧き上がった。

シャワールームの手前まで一緒に行って、ブースに入る。
体液が流れて行くと共に、言葉通り頭の雑念も晴れていった。
嘘かと思ったけどやっぱり冷静。満さんを好きになった訳でもなければ、柊平を嫌いになった訳でもない。
もっと言えば、あるかと思っていた感情が湧いてこないのが不思議だった。


罪悪感。どこに落として来たんだろう。




服を着る頃には身体の怠さもすっかり取れて、満さんにも笑顔で声を掛けることが出来た。
ロッカーの荷物を取ってふたりで地上に出る。
9月に入ってからぬるさと涼しさが入り混じって、時折吹く風が心地よかった。

「……満さん、お腹すいてません?」
「すいたねー。なんか食べる?」
「近くにガーリックトーストとパスタが美味しいお店があって。こないだランチしたら美味しかったから」
「いいね、行こうか。遥香ちゃんなんか話したそうだしね」

満さんの言葉に驚いて顔を見上げる。
何も言ってないのに。

「……バレましたか」
「なんとなくね」

セックスすると、そういうのまで見えてしまうのだろうか。
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