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女王のレッスン
第2章 ■縄師のテホドキ
691から歩いて2分程の所にあるイタリアンに入って、奥のコーナー席で隣り合う。
スパークリングワインとサラダをすぐに平らげて、白ワインのデカンタを傍らにエビトマトクリームの生パスタ。
ガーリックトーストが来た所で食べ続けてた手が止まる。
「一気に食べるんだねぇ。見てて気持ちいい」
「ああ……考え事してるとつい。満さんはそういう所気にしない気がして」
「全然平気。手が止まったってことは纏まった?」
「はい、多分」
「でも俺が食べたいなぁ。いい?」
「もちろん。私も食べたい」
ひと噛みすると熱々のバターが染み出して、塩加減もちょうどよくて、ワインとも絶妙に合う。
「あー、これ俺好き」
「よかったぁ」
「言いたくなったらいつでもいいよ。食べてるけど」
「あ、はい、えっと……」
ワインをまた飲んで口を拭った。
「満さんが最初に設定したあれは、自分のイメージ?」
「初体験がーてやつ?そうだよ。イメプレみたいな感じかな」
「やっぱそうなんだ……」
「なんで?よかった?」
「本当にそんな気分になったから、驚きました。一個の世界を作られちゃったみたいな」
「あれは必要に応じてやるんだ。俺様上司でも可愛い系後輩でも執事でも何でもするよ」
満さんはクスクスと笑ってワイングラスを口にする。
例に出した場面をなんとなくイメージした。確かにハマってる。
「変身願望みたいな?」
「近いかもね」
「そういうのもあったせいか、彼のことを、全然思い出さなくて」
「最中に?」
「そう。最中でも終わっても。凄く冷静だったんです。罪悪感が一切湧いてこない」
「ああ。なるほどね」
「満さんはない人だろうと思ったから、聞きたくなったんです。私はそれが、自分の欠陥に思えて……」
最後のガーリックトーストを口に放り込み、満さんはちょっと考え込む。
私はワインを2つのグラスに注ぎ足して、答えを待った。