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女王のレッスン
第2章 ■縄師のテホドキ
質問に質問で返されて、理解が追いつかなくなった。
向き合って、どう……?
「縛られて感じた自分。ミツに『したいなら相手をする』と言われた自分。貞操観念と性欲の間で葛藤した自分。性欲を選んだ自分」
「私が性欲に負けたって言いたいの?」
「違う。流されるままにヤッてたらそう言うけど違うだろ。順を追って思い出せ」
「順を追ってって……」
目を一度伏せて視線を落とす。思い出す、夢みたいだった時間のこと。
縛られて感じた時
「……ただ、縛られてるだけなのに、欲情してったのが怖くて、でも止まらなかった」
満さんにその気ならセックスすると言われた時
「なんで満さんはそんなこと言えるのか理解出来なかったけど、受け入れてもらえる安心感はあって」
ぼんやりする頭の中で浮気になるという理性と、したいという本能の間にいた時
「理性はあったし、冷静でもいたの。だけどしたくてしょうがなくて、自分がそれを受け入れるしかなくて……」
結局性欲を選んだ、私は、
「セックスは水を飲むみたいなものだって満さんに言われて、なんか納得しちゃって……したいって言った。まともじゃないって思いながら。なのに最中も終わってからも罪悪感とかなくて、それも怖かったけど……向き合うしかないって言われた。だからなんとなく受け入れてる」
それでもいつも通り柊平に会って、いつも通り会社に行って、いつも通りの生活をしている。
「柊平に会っても普通に笑えたし、満さんが好きになったとかでもない。嘘みたいに普通」
瑛二さんは私がぽつりぽつりと話すのをじっと聞いていた。
そしてひと言「そうか」と呟き、コーヒーを口にしてから私を向いた。
「それが、目的」
「え?」
落としていた視線を彼に向ける。
「何もなければ自分の特殊な性的嗜好に向き合う機会がない人間は多い。せいぜいAVの好み程度でな。でも何かに気付いた上で実際プレイするとなると話は違う。どんな状況で、どんな関係性で、何がしたい、何をされたい。全てに向き合わないと答えは出ない」
いつもの低い声で諭すように、瑛二さんは私に言う。