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女王のレッスン
第2章 ■縄師のテホドキ

「……触っていい?」
「どうぞ」

随分とリラックスした様子で首をコキコキしてみせたり、余裕な感じ。
そう言えば私から触れたことはなかったな、と思い返す。
柊平とも満さんとも違う、筋肉質な肩と腕。背中も広い気がする。胸板も厚い。

「7mで足りる?」
「余裕」

体温が高くて、私の手が冷たいのかと思うほど。肩や肩甲骨周りにも触れた。
あまり凝った様子は見受けられない。筋肉量が多いせいだろうか。

「やっぱ触るの苦手そうだな。あと緊張も。掌と指先で体温随分違う」
「そんなこと言われても……」
「遠慮しないでもっと来い」
「えっ?」

肩に置いていた両手を前に引かれて、瑛二さんの背中に上半身を預けるように倒れた。

「わっ、ちょっ……!」
「まあ一回のセックスくらいじゃどうにもなんねえか」
「ほんと人をなんだと思ってるわけ?こっちはいっぱいいっぱいだってば!」
「だーからほぐそうとしてんだろ」

大きな手が左右の私の手を掴む。
体温が伝染するように伝わってきて、血液が一気に流れていくみたい。

「……なあ」
「何」
「最初に縄持った時どう感じた?」
「最初?」

一番最初の講習の時のこと?
あの時は、そう、確か

「……思ったより軽くて……でも重みも感じた」

もう3週間も前のことなのに、はっきりと覚えている。

「……ならいい」
「なんなのよ……ほんっと意味不明」
「あー、……日本の年間自殺者数知ってるか?」
「は?2~3万人だっけ」
「じゃあその死因のトップは?」

何を言い出すかと思えば、なんて暗い話題。
死因のトップ?電車はよく止まるけどそれじゃないだろうし。
考えあぐねていると「縊死」と返ってきた。

「いし?」
「首吊りな。7割近くがそれで死んでる。その縄で人間死ねるんだよ。凶器だってことをちゃんと脳がわかってるならそれでいい」
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