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女王のレッスン
第2章 ■縄師のテホドキ
縄を纏める手を止めて、瑛二さんを覗く。
「ねえ」
「なんだ」
「前に言ってた『愛してないだろう』ってどういう意味?」
「そのままの意味だ。勝ち取れって言ったはずだぞ」
また曖昧な言い方。ムカっときて無意識に睨む。
「それがわからないから聞いてるの」
「それがわからないなら抱いてやるな」
「抱く、って……抱かれるの私なんだけど」
「関係ねえよ。縄が入れば縛る方が抱く側だ」
「じゃあ抱いてやるなって縛るなってこと?」
「抱いて、抱かれて、見過ごしてたことやわからなくていいことまでわかることがある。その時傷付くのはお前でありその男だ」
私の視線を涼やかに受け止めて、目の前の男は言い放つ。
私の疑問には何一つ答えることなく、目の前の男は何かを見てる。
「……やっぱりわかんない」
「なら覚悟して抱くんだな。その縄やるよ。手入れは済んでるしそろそろ新しいのをなめす頃だ」
嘆息して瑛二さんは立ち上がった。
私は結局答えを得られないまま縄を弄ぶ。
「明日か?」
「そのつもり」
「まあ、検討を祈るよ。卒業おめでとう」
そう言ってまるで睥睨するように私を見下ろし、キッチンへ向かった。
「……本当に卒業?」
「基礎はな」
「もっと教えて欲しいと思ったら?」
その背に問い掛ける。返事はない。
お皿とカップがカチャ、と音を立てて瑛二さんの手に載り、それはキッチンのシンクへ運ばれた。
「……本気で向き合う覚悟があるなら、連絡してくればいい」
「いいの?」
「その時次第」
私はまた彼を見据え、彼は真っ直ぐに視線を返し、遠い距離で交わる。
あれだけ近くにいたはずなのに。
「……わかった」
私は縄を手に立ち上がってキッチンへと歩み寄った。
カウンター越しに向かい合う。細められた目が私を見た。
「勝ち取ればいいんでしょ」
そして彼は私を満足そうに見て嗤う。
「……出来るならな」