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女王のレッスン
第2章 ■縄師のテホドキ
「……――ちゃん?」
手が止まったまま本結びにすら至らない。
息が荒くなって目の前が眩む思いがした。
「遥香ちゃん?」
遠く聞こえた柊平の声が鮮明になる。
手元を見たら、既に縄すら握っていなかった。
「……ご、め……」
自分の声が掠れてる。視界が滲んで、その手の上に落ちた。
「え?」
「っごめん……しゅうへ……」
「遥香ちゃん!」
振り返った柊平の顔なんて見れるはずもなかった。
なんで今、気付いてしまったの。
せめてもっと早く、或いはもっと遅くだったらよかったのに。
このままじゃ折角願望を告白してくれた彼の勇気を踏み躙る。
顔を上げて、縄を持って、もう一度始めればいい。上手く出来ない時はいつもそうしてきた。
なのに
そのひと言を言ってしまったら
「私、出来ない……」
もう、戻れない。
後戻り出来る、最後のポイントなのに
「……私、柊平のこと、好きじゃない……」
自ら降りることを選択した。