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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
「これから会わせるそいつは奉仕型の女王。しかも元々マゾだった」
「マゾでも女王様出来るの?」
「サドとマゾは表裏一体なんだよ。そいつはなって店も繁盛してる。マゾ経験を全部活かして緊縛も鞭も色んな責めも覚えたよ」
「はぁぁ……なんか、えー?混乱しそう……」
「何が問題なんだよ。全部ただの現実だ。向き合うんだろ?」
挑発するような口回しで言われて「わかってるよ」と返す。
紹介するってことは、その人から何かを学べと言うことなんだろう。
「で?その人とどうすればいいの?今度はレズプレイとかー?」
「ははっ!それも見物だけど違う。もっとシンプルだよ。そいつの言動を見ていればいい」
「言動って……」
「所作、話し方、接し方、なんでもいいよ。気になったら聞け。出来そうだったら盗め。それだけだ」
「そんなに完璧なの?」
「完璧?まさか。不完全だよ。だからいい」
『だからいい』の言い方が、なんだかとても優しげで、興味が湧いた。
この猛禽類がそんな風に語る女性って、どんな人なのかと。
「……知り合って長いの?」
「10年になるね。店始めたのが3年前」
「じゃあ、その人が成長するのをずっと見てきた……みたいな」
「……互いにって言う方が正しいな。把握出来たら行こうか」
「え、こんな時間から?」
「開店前だよ。行けば多分いる」
「アポなし!?」
「そんなこといちいちするかよ面倒くせえ」
立ち上がりついでにコーヒーを飲み干し、「ごちそうさん」と軽くタケさんに告げて、瑛二さんは出入り口へ向かう。
「ちょっと、もうー!」
私も慌ててグラスを空にし、バッグを取って後を追った。
タケさんが煙草を燻らせて軽く手を上げる。
「あ、コーヒーありがとうございました」
「いえいえ。楽しそうだね、瑛二さんも君も」
「……振り回されてますけどね」
苦笑いを浮かべて言うと、タケさんはまた朗らかに笑い「またね」と言った。
「ルカー?」
「はーい!それじゃ、また」