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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
「いなかったらどうするのよ」
「いたからいいだろ」
「あなたいっつもそれ。せめてこちらのお嬢さんの紹介くらいなさいな」
「ああ、そいつルカ」
「だから!前嶋遥香です!」
声を出すと、彼女はこちらを振り返り
「クラモトユイコです。よろしくね、遥香ちゃん」
小首を控えめに傾げ、穏やかな笑みを浮かべて言った。
「ジャスミンティーは飲める?ちょうど買ってきたから淹れようとしていたの」
「あ、好きです」
「よかった。瑛二くんは?」
「あれば飲む」
「座っていてね。すぐ行くから」
フラットパンプスを静かに鳴らし、ユイコさんはL字の向こうへ消える。
私は背もたれの高い贅沢なソファの端にちょこんと座り、室内全体をキョロキョロ見渡した。
和風モダンな雰囲気は過剰にならない程度のエロスを感じさせる。
ソファの脇の壁には扉分程度の幅の重たそうなカーテン。
あのフックが降りてるL字の角の当たりはステージだろうか。2面の壁にカーテンがあるけれど。
こちらの壁に掛かる4枚のフレームには、モノクロの緊縛写真が収まっている。
「ここの写真、瑛二さんが撮ったやつ?」
「ああ、手前がカナでその奥がユイ。あとここ所属のがもう二人」
「カナちゃん!?」
「ここのスタッフだよ、あいつ。言わなかったっけ?」
「岩谷さんからは近くのフェティッシュバーの子って……」
「それがここ」
「ほんと説明足りないよね!?」
「何?全然言わないで連れてきたの?」
ユイコさんがトレイを持ってこちらに歩いてきた。
テーブルに置いてポットからカップに、カップをそれぞれの前にすっと置く。
「多少はしたよ」
「多があった試しがないわ」
諦めたように息を吐いて、ユイコさんはスツールに座って私に向き直り、名刺を差し出した。
「改めまして。フェティッシュバー8 Knotオーナーの倉本結衣子です」
「あ、私も名刺」
バッグから財布を出して数枚入れている名刺を出す。
「前嶋遥香です。よろしくお願いします」
結衣子さんは私の名刺をまじまじと見て、顔を上げた。