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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
「綺麗な名前。会社近いのね」
「はい、この辺ならランチでも来るくらい」
「そうなのか?」
「呆れた。コミュニケーション足りてる?」
「まだ会って1ヶ月程度だよ。691の緊縛講習の受講者だ」
「じゃあ、カナちゃんを縛った女の子で瑛二くんがこないだ縄酔い寸前にさせたっていうのが遥香ちゃんなのね?」
「ご名答」
「最低」
「なんでだよ」
「でもいい判断だわ」
「どっちだよ……」
よくわからないけど、とても気心知れてそうな。
10年来の付き合いと言っていたけど、それはやっぱり、そういう関係も込みで、かな。
余計な邪推をついついしてしまう。
「ごめんね、カナちゃんや瑛二くんから少しだけ話は聞いていたの。緊縛する女の子は少ないからもしかしてって」
「いえ、謝るようなことは何も」
「大丈夫だった?この人無茶なことしたでしょう?」
「流れは確かに無茶だったと思います……けど……」
本気で心配されている口ぶりだから、こちらの方が焦りそうになった。
「お陰で自分の傾向にも気付きました。彼氏とは別れたけどそれもまあ結果論で」
「満くんのそれが原因……じゃなさそうね」
「はい。彼を緊縛しようとしたら好きじゃないって気付いちゃって、出来なくて……それで」
結衣子さんは僅かに逡巡して、察しがついたのかこちらを向く。
「……つらかった?」
「……彼に比べたら全然」
「そう。頑張ったのね……」
切なげな微笑み方は母性すら感じさせた。
元はマゾで今は女王様。私の想像など追いつかないようなことを乗り越えてきた、のかもしれない。
「で、アシスタント予定ってことはまだなの?」
「ああ、緊縛術に惹かれて俺から教わる一方で、やっと自分がマゾだと知ったばかり。この世界を知りたいんだと」
「瑛二さんっ!どうしてそう人のことを……っ」
「ユイ。ちょっとの間でいいからここに出入りさせてやってくれないか?」
「あら」
「え?」