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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
は?出入り?ここに?
「再来週からなら構わないわよ」
「よし。成立」
「ええ!?」
なんか勝手に成立してる!?
いやいや待って、出入りってまさか……
「働く、ってこと……?」
ここでMなりSなりの役割を持って……?
戸惑いに満ちていると瑛二さんは「アホか」とひと言呟いた後、結衣子さんに脚を叩かれていた。
「んだよ……。違うよ。客として暫く来てみろって言ってんだ」
「客として……?それでもこういう所って何かしたりされたりするんでしょ?」
「嫌ならさせないしされないわ。同意の上なのは基本。ここにくるお客さんやそれに接する子たちを見てればいいの」
ジャスミンティーに口を付けて結衣子さんは私を安心させるように言う。
「ただ相手を痛めつけたいならともかく、緊縛術に惹かれてやりたいと思うなら、奉仕の精神は不可欠よ。手法、魅せ方、機の読み方、視線や声、息遣いすら相手を感じさせる要素になる」
「でも私Mなんですよ?」
「SとかMとか本当は関係ないの。その本質はただのコミュニケーション。たまたま緊縛術がSMにも使われるだけで、緊縛そのものに快感を覚える人がSM愛好家かと言えば、そんな事は決してない」
「俺みたいにな」
「そうなの……?」
「俺が好きなのは緊縛した相手が綺麗になる瞬間だよ。その後のプレイはまさに奉仕。辱めも苦痛も悦ぶなら与える。挿入射精はある意味副産物だ」
やれやれ、って手振りで肩を竦め、瑛二さんはカップを手にした。
結衣子さんの補足で漸く捉えた瑛二さんの意図。
言動を見ろってことは、彼女の女王様としての振る舞いや接し方を見ろってこと?
「遥香ちゃんは?緊縛の何に惹かれたの?」
「カナちゃんが開花したみたいに綺麗だったから。私もあんな風に誰かを解放させられたらって思って」
「そう、素敵ね」
「……何がですか?」
「その言葉を表現として選択する感性が」
蠱惑的な笑みを瞳に讃えて結衣子さんは言う。
「どうかしら?ここで色んな人が持つフェティシズムの世界の片鱗に触れてみる気があるなら歓迎するわ」