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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
たったこれだけで一体何が?と思うほどすぐに結衣子さんは答えを出した。
緊張が続いたまま縄を解いていく。
後手を解放して縄を纏めようと手を掛けたら、結衣子さんは振り返った。
「遥香ちゃんの魅力は真っ直ぐさとひたむきさね。私が身体を預けた瞬間すぐ手つきが変わったの気付いた?」
「気付きました。しっかりしなきゃって……」
「それが最初から出せたら最高。で、足りない所は慈愛とポリシーと支配力。それから、自信」
「うぅ……いっぱいある……」
慈愛?ポリシー?支配力?自信?
自信は始めたばかりだからともかく……
余程困った顔をしていたのか、結衣子さんは吹き出してくすくすと笑いをこぼす。
「ああ、ごめんなさいね。それぞれが必要な理由はいずれわかると思うけど、ポリシーは最初から持っていた方がいいと考えてるわ。緊縛する時の信条ね」
「信条?」
「瑛二くんは『綺麗にする』、私は『心酔させる』。遥香ちゃんは?」
「……『解放させる』……です」
「ならそれをもっと前面に押し出していい。強い味方になるから」
私のことを諭すように言われて頷いた。
瑛二さんと対象的なくらい、よく笑ってよく褒めて、とても優しい口調で。
奇妙なバランスが取れているふたり、なのかもしれないとぼんやりと思う。
「瑛二くんは?何か付け足すことはある?」
「女王様の言う通り」
「もぉ。茶化さないでよ」
「本当にそう思ってるよ。俺じゃうまく言えないし伝わらないから助かった」
こういう雰囲気が。信頼し合っているようで。
邪魔出来ない空気を感じて縄を元通り纏めていると、視界の端で壁のカーテンが揺れて人影が現れた。