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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
「おはようござ……」
挨拶しかけて固まったのは、黒髪をソフトなオールバックで纏めた男の人。
「あら、リョウくんおはよう」
「……どういう状況ですか結衣子さん。ていうか、服」
「あ。いけない」
結衣子さんが思い出したようにブラウスを着るのを見遣り、店内に入った『リョウくん』はこの状況を訝しげに見ている。
「彼女は前嶋遥香ちゃん。瑛二くんのアシスタント候補で再来週からちょっとここにお勉強しに来るの。遥香ちゃん、こちらバーテンダーのコミネリョウくん」
「……こんにちは」
「こんにちは。へえ、瑛二さんがアシスタント持つとか意外」
品のある低音の声。インテリ感が漂うスッキリとした面立ちで、一重の涼しげな目はまるで蛇のよう。
「まあ成り行き上。そっちは本業帰りか?」
「うん。近くでインタビューしてたからそのまま来た。結衣子さん、これこないだの記事のラフ。チェックして下さい」
「ありがとう。見ておくわ」
肩に掛けた鞄からファイルをひとつ取り出して結衣子さんに手渡した。
インタビュー?記事?
「俺ちょっとバックヤードで仕事してます」
「ええ。後でね」
「じゃ、ごゆっくり。ルカ」
「え?なんで……」
「このふたりの間でちょっと話題だったからね、君」
カーテンの向こうにさらっと消えて、私は瑛二さんを睨みつけた。
「ちょっと話題?」
「そうか、ユイにその話した時あいつも居たんだったな」
「安心して、変な話はしてないから」
結衣子さんはファイルから中の紙を取り出して読んでいる。
雑誌の1ページみたいに見えて、私の視線に気付いた彼女は私を向いた。
「彼の本業はフリーライターなのよ。WEBも紙もやってて。これは前にここの紹介記事を彼が書いてくれて、そのラフが上がったのね」
「ライターなんですか」
「ええ。読んでみる?」