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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
「折角だから、691に行きましょうか」と言われて、昨日に引き続き来てしまった。
入り口で岩谷さんに「すっかり常連だね」なんて茶化されて入る。
買ってもらってしまった服たちは全部ロッカーの中。
何度もお礼を言っていたら、それすらももう言わせないような視線を返されて、素直に受け取るしか出来なくなっていた。
「結衣子ちゃん?久し振り。ルカちゃんとデート?」
「久し振りねタケルくん。羨ましい?」
「いやぁ、色々と大変そうだから遠慮するよ」
「失礼ね。アイスティー頂戴。遥香ちゃんは?」
「あ、同じのを」
日曜日だからか、既にお客さんは何人かいて湿度が高い感じ。
それもあってか新しいスカートに包まれた足がなんだか落ち着かない。そわそわして浮かれてる。
「ありがとう遥香ちゃん。楽しかったわ」
「そんな、本当にお礼言うのは私の方で……」
「うちの店の子はみんな私が各所で見つけて来た訳ありっ子ばかりでね。最初なんとなーく自信なさそうだったり冷めた感じだったりしてて。それでまず元気になることってなんだろうって考えたの。それがこのお買い物」
「あのHPに載ってる人たちですか?みんなにこれを?」
「そう。元々おしゃれ好きが高じて骨格診断やカラー診断が出来るように勉強したんだけど、本当に似合う服を着るとみんな、瞳がキラキラし出すの。それが嬉しくて。いい顔してたわ遥香ちゃんも」
さっきまでの不敵な感じが嘘のように穏やかに、結衣子さんは話す。
「私達は魅せることを仕事としているから、自分の魅力を知ることが大事だと思ってる。でも持って生まれた身体は変えられない。だから適応させる。そのためのひとつの手段が服装」
「そういうことだったんですか……」
「遥香ちゃんには自信が足りないと言ったの、覚えてる?」
「はい、昨日……」
「あれは緊縛術そのものだけじゃなくて、普段の態度にも言えること。だから意識して似合う服を着て、背筋を伸ばして、胸を張ってね。人間は卑屈になったら簡単に堕ちるものよ」
強い視線が私を刺して、言葉を失った。
そうだったのだろうか。彼女が、かつては。
少し重たい雰囲気を察してかタケさんが静かにアイスティーを出す。
でも次の瞬間には、結衣子さんはまた元の通り微笑んでいた。