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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ

自然に背を抱かれて誘導されるままだだっ広いフロアを横切っていく。
初めて入る更衣室には、ナースやメイドを始めとしたコスプレ用衣装が掛けられていた。

「遥香ちゃんは白のベビードールがいいわね。私も合わせようかなぁ……」

結衣子さんは私に見繕ったそれを手渡し、自身はすとんとワンピースを落として真っ赤なベビードールを羽織る。
私も服を脱いでそれを着た。ベビードールなんて初めて着る。肌触りがするするで気恥ずかしい。

「三点留めの次は胸縄とかどんどん身体に密着していく縛りになるわ。最初に瑛二くんから味わうよりはいいでしょう」

服を丁寧に畳みながら結衣子さんは言った。
そうか、取り敢えず8 Knotに行くことにはなったけど、緊縛そのものはまた教わる機会がある。
その時最初に縛るのがあの猛禽類ってことは……
こないだのそれを思い出す。覚えるどころじゃないかもしれない。

「……気遣ってくれたんですね」
「それだけじゃないどね。縛ってみたくなったのと、貴女がどう感じるか知りたくなったの」
「どう感じるか?」
「瑛二くんに縛られた時、瑛二くんてどんな人だと感じた?」

私は服をロッカーのかごに入れて結衣子さんに向き直る。
裾の切れ目から覗く細いウエストが目についてどきりとした。

「……熱くて繊細な人だなって」
「ああ、やっぱり素敵。感受性豊かな子はいいMにもいいSにもなれるのよ」

穏やかに笑いながらまた背に手を回され、そこを出た。

「背筋を伸ばしなさい。本来マゾがいないとサドは存在意義を失うの。この先どちらに回っても、それだけは忘れないで」

耳に流し込まれる囁き声に、促されるようにすっと背を伸ばす。
ステージに辿り着いた。床に麻縄。前のショーみたいにスポットはない。
ただぼんやりとライトは灯っていて、満くんとなぜかタケさんが傍で見ていて、横切って来たから好奇の目もある。
だけど、不思議と不安感はない。隣に確かな存在感を放つ女王がいる。
その彼女に、手で腰を強くひと撫でされた。
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