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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
「……何?考えちゃって」
「いや。どうだった?」
「うーんと……私に足りないって言われたもの全部見せてくれたような……」
「ほう。具体的に」
自分はいつも曖昧なくせに、と一瞬睨むも運転中の目には入っていないようで
仕方なくどう言おうかと頭を巡らせる。
「……縛られる前から支配されたみたいに逆らえなくて、最初から最後まで安心感でいっぱいだった。縄解かれる時でさえもっとこのままでいたいって思ったくらい」
「へーぇ……そうか」
瑛二さんはそう言うとくつくつと笑い、信号で車を停めてこちらを向いた。
「土曜に会った時、あいつをどう思った?」
「雰囲気も見た目も女王様っぽくないなぁ……って」
「じゃあ昨日は?」
「なんていうか……完全に振り回されっ放しっていうか……」
「緊縛の時だよ」
「さっき言った通りで――」
「奉仕の女王だっただろ。ユイは」
まるで恋人自慢でもするように笑う。
惚気なのかこれは。
「……なんで瑛二さんが得意げなの」
「サドでもマゾでもいいプレイをすりゃその分育つもんだからな」
「……自分が育てたって?」
「大いに貢献してると思ってるよ」
隠しもしない。どこまで突っ込んでいいのかわからなくなって苦い顔になり、そのままシートに身体を預けた。
恋人でもない。主従も違う。でもセフレって言ってしまったらあまりにも軽い。
名前のない関係性。
どんな境地か想像もつかず、移動にかかる重力に身を任せて、流れていく景色をぼんやりと見る。
「俺は別にお前に女王様になれとは言わない。ただ、緊縛するなら支配力や慈愛は身につけないと話にならない」
「それ、いまいちまだピンとこないんだけど」
「単純に言えば、相手に対して全ての責任を持つこと」
「安全性の確保のことじゃなくて?」
「だけじゃない。文字通り全てだ。支配するっていうのは相手への全ての責任を負うことと同義。慈愛はそこにかける精神。両方出来て漸く奉仕」