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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
車が古めかしい家の前に寄せられ駐車場らしき場所に収まった。
「来てるな、もう」
瑛二さんに続いて車を降りると、隣には小さくて真っ赤な2シータの軽自動車がある。
「可愛い車」
「それユイのコペンだよ」
木の引き戸を開けて、玄関ではなく庭らしき方へと進むその背を追い掛ける。
角を折れると庭が広がり、稜くんがバケツの中から麻縄を取って物干しに干している光景が飛び込んできた。
「稜」
「瑛二さん。ルカも」
「ユイは?」
「カセットコンロ持ってくるって。そこの新しい縄の毛羽焼きする」
「そうか。ルカ、稜を手伝ってやって」
「はぁい」
縁側なんて久し振りに見た気がする。その先は艶のある廊下と障子に畳の広間。かなり広そうだ。
そこにバッグを置いて、稜くんの元へ行く。
「麻縄って洗うの?」
「洗うっていうか煮沸。で、柔軟剤つけて脱水したんだ。折って干すだけでいいよ」
「わかった」
何気なく使ってるものがこんなに手間掛けているとは思わなかった。
濡れたそれを手にして掛けていく。
「結構地味なことするんだね」
「まあね。これで乾かしてオイル塗って毛羽焼きして仕上げで完成。人を抱く道具だから手入れは重要」
インテリ顔でさらりと『抱く』とか言うから少しドキリとした。
瑛二さんとは全然違うタイプ。でも、サディスト。
お店のオープンから結衣子さんと一緒にいるというから、お店のこともふたりのこともよく知ってるんだろう。
「あら、ふたりともいらっしゃい。お手伝いありがとう」
結衣子さんの声に振り返ると、彼女はクリーム色の上品な着物を着ていた。
髪はアップで袖に襷掛け。女将さんみたい。思わずはぁ、と溜息が漏れる。
「結衣子さん?」
「お前その格好……」
「アキヤスさんが昨日から日本に来ててお会いしてたのよ。着替える時間なくてそのまま来ちゃった。こっちに服あるし」
「ああ、それで来週からならOKってことか」
昨日とはまた全然違う装いに驚いて稜くんを見た。
「……アキヤスさん?」
「結衣子さんの奴隷でスポンサー。着物の彼女に責められるのが好きなんだって。開店に出資したらしい。投資家で今は海外拠点とか」
「投資家が奴隷……?」
「ありがちだよ。どっかの社長とか会長とかなら店にも来る」