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毒蜜喰らわば
第12章 イタコの孫が見通した、愛・・
コーヒーを買って庭園に戻り、里佳子は進の隣りに、私は雅斗の隣りに座る。
このベンチで、茂と初めて食事をした夜に缶ビールを飲んだ。
プルタブの音とはしゃぐ彼の声に、隣りのカップルがクスッと笑っていた。
今日はその隣り合ったベンチに里佳子夫婦と、
イタコの孫と私が並んで座った。
私は雅斗の方に体をひねり、話を催促した。
「彼女とどんな話をしたんですか?」
もはや私の中では遊女は存在する生命体。
感情を持ち行動を起こす、一人の女。
世で言う幽霊などと簡単な名称で呼びたくはなかった。
「まず・・彼女がこの蛍庭園を好きな訳から話そうか。
お侍と出会ったのがここなんだ。
彼女がここで男に襲われそうになったところをそのお侍に助けられたんだって」
聞いて私は、あっと叫んだ。
あの時のデジャブだ。
茂を待っている時に酔ったサラリーマンに絡まれて、男に詰め寄る茂の腕を引いて止めた。
あの時、着物姿の男の袖を引きながら、おやめください、とすがった・・
私?遊女?
それはまさに私の後ろにいる遊女の記憶だったのだ。