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毒蜜喰らわば
第5章 偶然は必然の前ぶれ
*
細い路地を直角に曲がり、さらにもう一度直角に曲がって少し行くとその店はある。
重々しい扉にアンティーク調のテーブルと椅子。
カウンターの背にある棚にはいろんな形のカップアンドソーサーが並んでいる。
「すごく雰囲気のある素敵なお店ですね。よく見つけましたね、裏通りなのに」
向かいに座った茂の問いかけに、一瞬迷ったが正直に答えることにした。
「じつは・・カレに連れてきてもらったんです・・」
「カレ?ああ、やっぱり彼氏がいるんだ」
「やっぱりって・・相手がいるような女に見えましたか?」
変な聞き方をしてしまった。
「見えますよ、だって魅力的な女性だから、当然彼氏はいるよなって。
でも待ち合わせじゃないっていうからラッキーって、今は正直思いました!」
茂の言葉に心は舞い上がった。
が、嬉しさの反動が大きかったがゆえにかえって冷静な切り返しができた。
「それって、ヒマつぶしの相手が見つかってラッキー、ってことでしょう?」
「あはは!ばれましたか」
言ってすぐに、テーブルに立てかけてあるメニューを手に取り、私に差し出した。
「ヒマつぶしの相手にしてしまったお礼とお詫びに僕にご馳走させてください。
よかったらケーキも一緒にどうぞ」
「じゃあ遠慮なく、ブレンドとレアチーズケーキをご馳走になろうかしら?」
「どうぞどうぞ。じゃあ僕は・・
せっかくコーヒー専門店に来たからこのコスタリカっていうのにします」
飲んだことないから、そう言って茂は興味深げに
カウンターに並んでいるコーヒー豆の瓶を眺めた。