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毒蜜喰らわば
第5章 偶然は必然の前ぶれ
緊張して、うまく会話ができるか心配したけど、
結局は仕事関係の話題で無難に話が進んだ。
前任者の川島さんの人柄を褒めるだとか、茂の移動前の担当エリアの話だとか、
あたりさわりのない話の代表、みたいな内容だった。
「ここの担当になる前は錦糸町とか両国とか下町っぽいところだったんで、
青山や原宿みたいに華やかなエリアにまだまだなじめないで困ってますよ」
川島さんについて回った会社はどこも静かな雰囲気で、
自分が回っていた人情丸出しのようなにぎやかな会社に慣れ切っていたから
声音まで変えなきゃいけないかなって思ったと声をあげて笑っていた。
「うちは大丈夫、私自身もガサガサとした人間ですから、
リラックスしてお越しください」
気負うことなく進む会話に、自分の中にムクムクと動いていた恥ずかしい欲望は、
いつの間にか小さくなって静まっていた。