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毒蜜喰らわば
第5章 偶然は必然の前ぶれ
時計の針が容赦なく、楽しいひと時の終りを告げる。
店の外に出るとさすがに空は黒かった。
「すみません、慌ただしくて。ほんとうに暇つぶしに付き合ってもらう形に
なっちゃいましたね、ごめんなさい」
「いえ、いいんですよ。こちらこそご馳走になってしまって。ありがとうございました」
茂と他愛もない話をしながら大通りまで戻ってきて、
お礼の言葉で締めくくりすぐ前にある地下鉄への階段を下りていく、つもりでいた。
だが・・
表参道の両脇にどっしりと構える燈籠の淡い光を見た途端、
体の中が激しく脈打った。
まるで自分の意志と反して別の生き物が呼吸をはじめたような・・
「あの・・また2人で会ってもらえますか?」
何言ってるんだ、私!
頭の中ではそう叫んでいるのに、もう一度、同じ言葉を繰り返した。
また会ってほしい、と。
茂は、驚きの息づかいをゆっくりと呑み込んで、いいですよと頷いた。