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毒蜜喰らわば
第7章 心ここにあらず
*
「ちょっとぉ、ちゃんとお守りにお願いしてる?
お参りしてすぐにご利益があったっていうのにさぁ。
もしやお守りしまいっ放し?」
翌週日曜の昼下がり、代官山のテラスカフェで向かい合っているのは、咲枝。
先週の美術館デートで雅治は機嫌を損ねたのか、
来週はデートは休みだと帰りに言い渡された。
あの時の私の態度じゃあそう言われても仕方がないし、私の方も
なんだか疲れてしまっていたので、いいよと素直に頷いてしまった。
「うん・・しまいっ放しといえばしまいっ放し・・だって、お守りだからさ、
お財布に入れて持って歩けばいいんじゃないの?」
「あ~これだからだめなんだよ、信心深くないヤツは。
お守りってのはね、神棚に祀るお札が小さくなったもんなんだよ。
だからちゃんと毎日手を合わせなきゃ、守っちゃくれないだろうが」
ほんとかよ?と斜めに咲枝を見てみるが、やけに自信たっぷりな横顔と
説得力のある声に、私の負けかなと肩を落とした。