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毒蜜喰らわば
第8章 禁断の扉が開いた・・
食事中、私は何度となく茂の恋人の事を聞いてみようかと思った。
どんな人なの?どこで知り合ったの?将来は・・誓い合ったの?・・・
だけどそれよりももっと知りたい事がいくらでもあるだろう?
私はまだ茂の年齢を知らない。
茂の住む場所も知らない。
どんな人生を送ってここまできたのか、彼そのものについて
ほとんど知らないのだ。
「楠木さんはおいくつなんですか?」
「32です。稲村さんは?・・あ、ごめんなさい、女性の歳を聞くなんて」
「いいの、気にしないで。楠木さんの一つ下、31です」
「そうなんだ、ほぼ一緒なんだね。だから余計に親近感がわくのかなぁ」
尾を引くピザのチーズと格闘しながら、たえず笑顔で私と目を合わせてくれる。
同じ空間で同じ空気を吸うだけでも、胸のときめきは鳴り止まない。
出会ったばかりの男と女の新鮮さを、雅治も私もとっくに忘れてしまった。
その忘れた初心を茂に呼び戻してもらった。
今夜の私は肌の水分まで取り戻したような、みずみずしさを感じていた。