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FUJITAYA
第2章 アラン模様の意味
「鮫島さん、もういい時間なのにごめん。これね、教えてもらった方がいいから、あと少しだけ時間ちょうだい。帰りは車で送っていくから。」
「え、そんなの申し訳ないです。」
「それはまたあとでいいから、ここ座って。」
椅子に腰かけ、編み物セットを出し、藤田さんに編み図を見てもらっていると、
「こんばんは。夜遅くにこんな格好でごめんね。」
60代の女性が出てきた。瞬時に編み物の先生だと思った。
「私こそこんな夜遅くにすみません。」
「あなたが謝ることじゃない。要が無理言ったことなんて聞かなくても分かる。使える足は使っておいた方がいいから、送ってもらいなさい。鮫島さんといったね。」
「は、はいっ」
先生は藤田さんの祖母と聞いていたが、見た目がすごく若々しく、雰囲気や表情から滲み出る優しさは、藤田さんと似ている。
藤田さんは先生に一言だけ何か伝えた後、私に明日の準備してくるよ、ちゃんと家まで送り届けるから心配しないで、と頭をポンポンと撫でて離れていった。
頭ポンポンなんて久しぶりにされたけど、…嫌じゃなかった。
少しだけキュンとしてしまった自分を奮い立たせ、先生の方に向き直った。